普及センターコーナー

乳質改善は儲かる その1

 搾乳作業は畑作でいえば、収穫作業です。
 この作業でロスが多いと、それまでかけてきた様々なコストや労力が無駄になってしまいます。
 毎日の作業の中では乳房炎の発生や廃棄が当たり前のようになっていて、もったいないという意識が薄れることがあります。
 経営コストが高まっている今、仕方が無いで済ませることなく、廃棄ロスを少しでも減らせるように取り組んでいきましよう。

1 釧路管内の事例紹介

 釧路管内の農場Aの事例をご紹介します(写真1)。

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 農場Aは繋ぎ飼い飼養で、牛床管理を徹底しています。
 年間を通して乳房炎の発生は数頭で、ほぼ全量出荷を達成しております。

◎体細胞数の状況

 平成25年度の平均体細胞数は、バルク乳平均が63,000(図1)、乳検(図2)の全頭平均で67,000となっています。

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 バルク乳と乳検の体細胞数がほぼ同じ数字ですから、別搾りが少なく、全量出荷に近いことがうかがえます。
 また、リニアスコアは1.5、リニアスコア2以下の割合は80%となっています。
 このことは、80の牛が乳房炎菌に曝されず、衛生的な状況にあることを表しています。

◎乳飼比と差引乳代の関係

 農場AはTMRセンターに加入しています。
 ほかの構成員と比較して、乳飼比は6.4%低く、経産牛一頭あたりの差引乳代(乳代から飼料代を引いた額)は13,000円程度高くなっています(図3)。

図3

 飼料費が乳代として得られ、無駄にならなかったことが一因として考えられます。

 購入飼料などの生産資材が高止まりしている現状ですが、乳質を安定させ、全量出荷に近づけることで、乳飼比を下げ、差引乳代を確保できることをこの事例では示しています。

2 乳質改善で得られる利益

 事例の他にも乳質を改善することで次のことが考えられます。

  • 乳房炎の治療費、淘汰更新にかかる費用の減少
  • 別搾りの労力や精神的苦痛の軽減
  • 抗生物質残留事故リスクの低減
  • 乳腺細胞の萎縮による乳量減の緩和など

 乳房炎は必要な対策を講じれば必ず減らすことができます。
 どうすれば一滴でも多く牛乳を出荷することができるか。
 次回からは具体策を3回シリーズで掲載します。

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